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君が0番で輝き続けてくれますように

無垢な味覚

わたしはあまり“手料理”というものを食べずに育った。幼い頃は祖父母の家で暮らしており、子どもの味覚には煮魚や里芋の煮付けなどは口に合わず、ごはんにたまごと醤油をかけただけのものをさっとかきこんであとは自分の部屋でポテトチップスやスイスロールを食べていた。母とふたりで暮らすようになってからも、昼夜働いていた母が作るものは焼きそばとちゃんぽんとカレーのローテーションだった(もちろんこれは立派な料理なのだけど)。

森下典子さんの「いとしいたべもの」を読んでいて、何となく自分の食べ物の記憶を探っていたら、ふと、今でも解けない謎があることを思い出した。

いとしいたべもの (文春文庫)

いとしいたべもの (文春文庫)

  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 文庫

母は基本的に凝った料理を作る人ではなく、平日は簡単なもの、休日は外食だったが、一度だけ、学校から帰ると出かける前の母が「ごはん、冷蔵庫に入れてるから出して食べて」と言って出ていき、冷蔵庫を開けると「鮭の南蛮漬け」が入っていたことがあった。

わたしと母は、たまねぎが嫌いだ。ふたり揃って嫌いだ。カレーやハンバーグにみじん切りの状態で入っているものは食べられる。わたしは親子丼やカツ丼に入っているものは食べられるが、母はそのレベルでも無理で、丼ものは天丼や天津丼しか食べられない。

それなのに、「鮭の南蛮漬け」が入っていた。おおかたのものと同じように、たっぷりの生玉ねぎが乗った状態の、だ。せっかくお母さんが作ってくれたのにちっとも食べられなくて悲しかった。

今でも、なぜ母があれを作ったのかわからない。今になって聞いたって理由は覚えてないだろう。なんだったんだろう。

毎日とる食事の「あの時の味」すべてを覚えていることはできないが、わたしはあのとき上に乗っているたまねぎを丁寧に取り除いて食べた鮭の味を忘れない。生玉ねぎ独特の匂いやピリピリとした辛さが染み込み、酸っぱかったあの味を。

この本に載っている食べ物はどれも魅力的だけれど、森下典子さんが高熱を出し3日なにも食べられなかった後に食べたおかゆの描写はものすごい。「無垢な味覚」の状態にわたしもなりたい。

そういえばDISH//が初めて武道館の舞台に立った日から胸がいっぱいで3日間まったくものが食べられなかったことあったけど、あのときは4日目に外を歩いていて「あ、無理だ倒れそう」と思い、そばにあった寿司屋に駆け込んで海鮮丼を食べたんだった……。別に覚えてないな、あの味。

ちなみにわたしはお茶漬けが嫌いだがその理由は「あまりにもすぐ食べ終わってしまうから」である。これはぜんぜん本に関係ない話……。

昨日のごはんはアボカドとトマトとツナの冷製スパゲッティ。冷たいスパゲッティってなんでこんなに麺がむっちむっちでおいしいんだろう。実山椒オイル、使うと本当に味が複雑かつ爽やかになりおいしいんだけど当たり前に使うとなくなるのでもったいなさがって使い渋ってしまう。

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パスタを皿に盛るのは難しい。プロがくるっと円を描くように盛っているの、“簡単そうなのに難易度がウルトラハイパーメガ”なこと第1位だと思う。

連休前はばたばたしているのでこの3日間は簡単な麺料理で乗り切るぞ。麺は簡単なのに一皿で完結できるからすごい。

お母さんが作っていた焼きそばも、ちゃんぽんも、忙しいお母さんの味方だったんだな。