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ダイヤモンドの中心は、君

例えはじめの一歩頼りなくとも

松本くんが一軍登録されて、1ヶ月半ほどが経過しました。
チームとしては開幕からここまで58試合。現状なんとかリーグ首位に立っているところ。

私としては一軍登録から約1ヶ月経ったところでようやく現地で今季ホーム初勝利を手にするところを見ることができ、ひとつ息を吐くことができました。
このタイミングで今の気持ちを少しまとめたいなと思い久しぶりにブログを書いています。

去年、初めて野球選手を応援することになった感想を書いたのは、2021年シーズンが終わってすぐの10月29日。
そこから冬が過ぎて春まで、松本くんは着実に夢までの階段を登っていました。

年末には年俸40%UPで契約更改し、春のキャンプからオープン戦と、投手層が厚いホークス内での競争が続く中で抜きん出た結果を示し続けました。
去年1年、4月から最後まで一軍で他の誰にもできなかった役割をしっかり果たしたこと。目立った成績は残らなくても、その1年が確実に松本くんを成長させたこと。
それは、自信に満ち溢れた振る舞いからも明らかで、応援した1年間をしっかり血肉にしている姿を観られることは喜び以外の何物でもありませんでした。

3月14日。残り2枠だった開幕ローテーション入りを監督が名言した日は、会社から少しだけ抜け出して気が済むまで泣きました。
思いがけぬホワイトデーのプレゼント。彼が積み重ねる白星に相応しい日の発表でした。
記録に残りにくい中でも貢献を続けた彼へやっと神様がご褒美をくれるんだと、2022年は幕開けから最高のシーズンになると信じて疑っていませんでした。

そこで起こったことは、今でも思い出すだけで胸が痛くて書き記すことはできないけれど……。

思わぬアクシデントに見舞われ、離脱が決まった時、嬉しくて泣いた涙の量をあっという間に超えるくらい悔しくて泣いていた気がします。
これまでにない喜びを抱えていた分、手放したときの絶望も大きくて、心の真ん中にぽっかり穴があいてしまった気持ちになりました。

ただ「開幕に間に合わない」という事実だけが目の前に立ちはだかり、彼自身の思いや言葉を報道してくれるメディアはなく、そして彼自信も何かしらの媒体を通じてメッセージを発信することもなく、何をどう信じていいかわからなくなり、暗闇の中にいるようでした。

離脱が決まった日は、3月23日。雨の水曜日だったことをよく覚えています。
平日の筑後に行くことはできないから、様子を知ることができない木曜日と金曜日の2日間がとにかく長く感じました。
本人の状況がわからないまま開幕まであと2日と迫って、世の中が徐々に盛り上がりを加速していく中で、その中に関われないのは本当に辛かった。

そんな中だったから、筑後で実際に松本くんが走ってるのを観たときもキャッチボールを観たときも、それだけで喜びを感じられることが幸せに思えました。
私にとって、この人こそが希望そのものだ!と思ったし、目の前の松本くんをただ信じたら良いと実感できる時間でした。
決して多くの言葉を語ることをしない松本くんを、どうしてここまで信頼できるのかといったら、それは松本くん自身がいつでも真っ直ぐな姿を見せ続けてくれてるからだと思います。

それから1か月は、初めての筑後通いでした。

松本くんは練習に現れるのが本当に早いので、朝7時より前のまだ暗い時間に家を出て電車に揺られ船小屋に向かう日々。
それでも向かえば必ず真摯に練習に取り組む姿があり、改めて好きになる人を間違わなかったなと誇らしく思える、タマスタに通った日々はそんな日々の連続でした。

復帰は思ったより早くて、4月5日の広島戦。あまり長いイニングを投げないことはわかっていたけれど、それでもスターティングピッチャーとしてマウンドに立つのを見られることは格別の思いがありました。

登板を終えたあと、室内練習場の前でインタビューに答えているところを見ました。
田尻さんが「二軍も公式戦だから、なかなか試したいことを試せる環境じゃないよね」と言った時、
松本くんが「新しいことに取り組むわけじゃなくて既にあるものを取り返すだけなので」というようなことを(ニュアンスしか覚えてなくて一言一句同じではないと思う)言っていて、
その言葉には、松本くんが持っていた開幕前の自分に対する確かな自信が感じられると同時に悔しさも滲んでいて、どうかその手から離れてしまったものがきちんと手の中におさまりますようにと願いました。

そこから一軍に復帰するまで、決して順風満帆とはいかなくて、上がってくる前のファーム防御率は6点台と、4月はとってもとっても苦しい時期でした。

ちょうどPayPayドームで試合があって、本来なら一軍で姿を観られていたはずの松本くんの誕生日は土砂降りの雨で、タマスタの室内練習場を眺めることしかできず、思い描いた風景とのギャップを感じずにはいられなかったです。

約束されていたはずのローテーションが遠くなり、シーズンの半分はファームで過ごすことになるかもしれないと不安は尽きませんでした。
それでも、当初の想定とは違ったけれど、松本くんはちゃんと4月に上がってきました。

たった1イニング無失点で抑えただけで一軍復帰していいのか、調整不足じゃないのか、本当に大丈夫なのか、不安がなかったかといえば嘘になります。
正直、出場選手登録された日は、喜びより不安が勝っていて、それでも信じていくしかないと改めて思いました。

登録されて最初の登板は思ったより早く訪れて、まさか早く降板すると思っていなかったレイの後を引き継いだ緊急登板でいきなり三者凡退はかっこよすぎて震えました。

そして 今、一軍復帰してちょうど10試合出場。思ったような成績が残せているわけではないけれど……それでもここまでリリーフで2勝しています。
ペナントレースは最終的に「勝ちの多さ」で順位が決まるから、松本くんで勝てた試合が既に2試合あるということ。

今年、聞けて嬉しかった言葉があります。

今シーズン1勝目のDeNA戦で彼が発した「自分のためにも」

好きになってここまで、この言葉が聞きたかったのかもしれない、と思いました。

松本くんは、去年なにかと「チームのために」と発言することがとても多かったです。少ない発言の中でも、必ずと言っていいほどこの言葉を聞きました。

もちろん、野球はチームプレーです。全員が個人のエゴで動いていたら成り立たないことは百も承知だし、何より周りを思いやれる松本くんらしい言葉だなと思います。

でも、松本くんはまだ若いから。

プロ8年目という響きだけ聞くと中堅の立場に思えるかもしれないけれど、高卒ルーキーで26歳になったばかり。伸びしろだってちゃんとあります。

そう思うと、もっと強欲になっても良いんじゃないかと思っていて。
安心や安定を求めて、慎重になって、縮こまった投球になるのはもったいないなと思ってしまうんです。

「器用すぎて、丁寧にまとめようとしすぎる」

解説で何度も聞いてきた言葉です。

あんなに力強い球を投げることができて、四隅に投げるコントロールがあって、それでも彼が圧倒的存在感を示すことができていないのは、彼自身が黒子としての役割を果たそうとしすぎている部分もあるのかな、と思う部分があります。

インタビューで巨さんが「手から離れたらどうなるかわからないから考えても仕方ない」と言ってて、エースでも紙一重の部分は神頼みくらいの認識なんだと思いました。

この、絶対に届かない場所から、松本くんにひとつお願いをしたいなと思います。

もう、唯一無二の才能から、逃げないでほしい。

工藤前監督が解説で「変化球を操らせたらチーム1、2」だと言っていました。
工藤さんだけじゃなく、松本くんを評価する人たちは口を揃えて「持っているモノが違う」と言います。

なのに、松本くん自身は「自分にはこれといったものがない」と言う。

私は松本くんが投げる球が本当に好き。打者をその場から一瞬も動かさずベンチに返してしまうアウトローのストレートにはいつも惚れ惚れしてしまいます。

松本くんの味方でいたいと心から思っているのに、松本くん自身が松本くんをどこか遠くから冷静に俯瞰して見ているようなきがする。
それは松本くんらしいと思うし、淡々と成長していく姿をかっこいいとも思うけれど……どうせ外側から自分を見るなら、もっと良いところを見てほしいなと思います。

松本くんは好きなものの話をあまりしない。それだけじゃなく、自分の話をあまりしない。していた時もあるかもしれないけれど、少なくとも私は知らない。

開幕ローテーションを逃した時、悔しい思いでいっぱいだったと、初勝利後の記事でようやく読みました。ひどく悲しくて、とても嬉しい発言でした。
マウンド上でどれだけ孤独でも、松本くんは悔しい思いも嬉しい思いもちゃんと抱えた感情がある人間なんだなと、改めてそう思えるから言葉があることは嬉しいです。

感情があるということは、独りじゃないってことだと思います。

マウンドに立てば1人だけど、投げる先には甲斐くんがいて、投げる松本くんの内側にも感情があって、だったら内側の松本くんには誰よりも松本くんのファンでいてほしい。
松本くんの良さを誰よりもわかってて、足りないこともわかってて、信じて背中を押せる。自分の心の中に味方を飼っていてほしいなって思うんです。

松本くんは負けない。負けるはずがない。球場で観ながらいつも、大丈夫、大丈夫、と呟きながら観ています。松本くんなら大丈夫。
遠い客席からの、私の声は届かないから。松本くんに聴こえる場所に、大丈夫を届けられる存在がいたらいいと思います。

真面目な松本くんのことだから、簡単に自分を全肯定することなんてできないと思うけれど……自分が幸せになるために、まずは逃げずに向き合ってほしいと思っています。

今永昇太さんという球界を代表するエースが、未だに自分のことをエースと認めないのは、彼がエースに相違ないからだと思っています。
背負っているものは、時に重くのしかかるかもしれないけれど、見ようとするには振り返らなければならなくて、振り返らなければ見なくて済むことです。

5月29日。PayPayドームで2勝目を観ることができました。通算150勝まで、あとたった1アウトで、マウンドを降りなければならなかった和田さんの後を引き継いだ、あまりに大切な1.1イニングで、重い1勝だったと私は思います。

その1つの白星が、これから松本くんが歩く道を明るく照らしてくれますように。

本当は6月6日にこの文章を書き終えたかったけれど間に合わなかった。梅雨に入る前に、私の気持ちを一旦書き残しておきます。

松本くんがキャリアハイの活躍をする1年になりますように。